TRAVEL

8/8 イスラエル・パレスチナ

岩のドームにはイスラム教徒以外は入れなくなっていた。「ウチの店で数万円の買い物をしたら、岩のドームがすぐ近くに見える屋上に登らせてやる」というアラブ人が、しつこく土産を買わせようとしてきた。

微妙に金額が怪しいので受け流した。

旧市街の最後に、イスラム教地域を歩きライオン門へ。

そういえば、ヴィアドロローサの道筋はここから始まる。

最終地点は昨日の散策で頭に入っているので、ステイションを見つけるままに順番に歩く事が出来た。

悲しみの道がたどり着くのは聖墳墓教会。

丘を覆う様に建っているこの教会の2階へ上る。ヴィアドロローサは十字架を経て、小さな聖堂に納められた墓石で終わる。

このエルサレムにはもう一箇所、ゴルゴダの丘だと思われている場所がある。聖母マリアが眠ってるなんて教会もたくさんあったりする。それ以外の聖地も含めてほとんどが推測と伝承をもとに後から適当に定めた聖地だ。

だから歴史的な証拠は無く、厳密なイエス以前を調査する考古学研究の対象にはなっていない。本当のエルサレムは、何度も侵略され、焼かれ、破壊され、2000年前の道や家等はいく層に渡る瓦礫の下で眠っている。

そういう、知識で冷めた目線で見ていたかというとそうでは無い。

聖地とは何か。イエスの生まれた場所、かつて歩んだ道、死んだ場所を、決めざるをえなかった人間の願いが初めにあり、それがカタチとなったのだ。

巡礼とは何か。この地で何億の祈りが捧げられた。聖なる場所を定め、この場所に来て汚れた心を洗い清めようと戒告をしてきたのだ。ここには歴史を通じて救われたがっていた人間の真実がある。それは歴史の事実よりも強い。

エピローグ。

無事に旅ができた事を ローレンスさんの携帯電話へ報告をしたら、御飯に呼んでくれました。

「もう、やることはみんなやりきって、あと帰るだけです」
「じゃ、イスラエル博物館へ行きましょう。案内しますから」
そこには、ユダヤ人芸術家を中心に、世界の巨匠の名画が集まっていた。ダリ、セザンヌ、ゴーギャン、アンディーウォーホール、ルネマグリット、などなど。

それから、死海写本館。

何も恩返しが出来ないのに、タクシーからチケットから御飯まで すっかりお世話になってしまった。最終日、おカネもギリギリで本当に何も持っていなかったので、『死海のほとり』の文庫本を置いてきた。読んではもらえなそうだが。最後は夢のような気持ちで帰路についた。

自宅に着いたら、妻がカレーを作っていてくれた。

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