ガンジス川。明け方、小舟を出した。

あんなにごちゃごちゃした街の対岸には、全く何もなかった。街側はこの世、対岸はあの世、らしい。

牛の屍も流れていた。

沐浴とか、洗濯とか。

精霊流し。

ベナレスの川沿いのヒンズー寺院。今日も煙が上がっている。

ガイドのマルカスさんの話しで、心に染みた話しが二つある。

一つはインド人は、自分の人生、自分の立場を受け入れるということ。受け入れるから、隣の人をねたまない、あせらない。

もう一つは、問題を背負ってでも難民は受け入れる。そして、食料を与え土地を与えた。なぜなら、難民たちは困っていたから。

この『受け入れる』は法律でなく、宗教でもない。無意識に、当り前のこととして小さな頃から。

遠藤周作『深い河』。最後の舞台となった理由が解ったような気がする。

川へは入らなかった。贖罪とか、転生とか、自分には必要ないと思った。

観光気分で浸かるような浅い河でもないと思った。

船から見かけたペンション、クミコ・ハウス。