アイスホテル。氷の壁のかまくら、かなり巨大な建物。

中には氷の柱やシャンデリア、氷のソファやベッドには、トナカイの毛皮が敷いてあり、暖かくは無いまでも、冷たさをしのげる。

一室ごとに違う氷のオブジェを美術館のように見てまわる。

氷のシャンデリア。

氷の部屋で泊まる人たちは、凍え死にしないようにレクチャーを受ける。これを軽んじていると、寝てる間に氷ってしまうのだ。でも、この地でずーっと生きてきた民族もいるかと思うと、人間てすごいなと思う。

そうこうしているうちに夜。

ホテルの裏には氷のミュージカル劇場があった。

緑の季節のうちに設計図にそって電線を敷き木枠を組む、雪の季節に建物を固め、氷の彫刻やブロックを設置。枠組みをはずすと釘もガラスも使わない水100%のホテルが完成。

春が来ると、全て溶けて流れて消える。冬にしか存在できない、幻のホテル。

夜には夜の美しさ。彫刻の多いスイートルームから、ワンルームサイズまで客室数は多い。

雪質の壁は防音効果があるのか、シーンと静まっている。寝袋にシーツを入れ、頭までかぶり顔を出す。脱いだ服も寝袋の中に入れておかないと氷ってしまう。トナカイの毛皮の防寒効果は凄い。眠る時は、発泡スチロールの箱にこもっている様で完全無音の神秘が心地よかった。

氷の部屋の寒さで眠れなかった人が、ロッジで寝ていた。

夜中、外の温度はマイナス33度。我慢して15分、それ以上は痛くて外に居られず室内に入って暖をとる。クツの中や背中、お腹には、大量に持参したカイロをあてていたのだが、居ながらにして自分の頬が凍りそうになる寒さは困った。

耳もちぎれるかと思った。毛糸の帽子に上着のフードを被せ露出を最小限にした。カサコソと紙袋の音がすると思ったら、自分のジャンパーが凍ってこすれていた音。マフラーで口を隠し、吐いた息が上に向かった瞬間、まつげが凍った。

それでも、数十分おきに外へ出た理由はオーロラが見えていたからだ。刺す様に降るものや魔の手が伸びて来る様な動き、目が放せなかった。